「パパ~、ママ~、野生のハリモグラがいた~!」

と、息子が息せき切って玄関の扉を開けた。
シドニーに来て4度目の秋(2009年の4月のある日)のこと。
息子の背中にはこれでもかみたいに重いスクールカバン。
顔を見ると、汗が流れていた。

「え、どこに?」

「リザーブのとこ!あそこにいたら危ないよ。車に轢かれちゃうかもしれない」

ダーリンと私は飛び出した。
リザーブは直ぐそこだけど車に乗る。
凄い勢いでリザーブまで走らせる。
ハリモグラ君は道路脇のリザーブの入口のところにしがみ付いていた。
でも、もそもそと道路の方に出てきたら危険だ。

ダーリンは着ていたシャツを脱ぎ、ハリモグラ君の身体を包んだ。
何とか持ち上げてリザーブの中に戻そうというわけだ。
だが、これが至難の業(って私は見ていただけだけど・・)。
もちろん針が痛いし、ハリモグラの爪は強力で一度爪を立ててしがみついたらその力は凄まじい。

それでも、なんとか格闘の末、ハリモグラ君を無事リザーブの中に戻すことができた。
やれやれと安心したのだけれど、残念なことにあんまり急いで出たのでカメラを忘れてしまった。

その日以降、ダーリンと息子と私はキョロキョロ。
お散歩に出るたびに再びの邂逅を願って目をキョロキョロ、キョロキョロ、キョロキョロ。

そして、やっと、5月の初め、念願が成就。

いたもんね、ハリモグラ。
もうめちゃくちゃ嬉しかった。


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ハリモグラは日本ではあまり知られていないと思う。
かくいう私もオーストラリアに行くまで知らなかった。
シドニーオリンピックのマスコットにハリモグラが使われたそうなのだが・・・そうだったっけ?そういえば・・・


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タロンガ動物園で初めて見たときに一目惚れ。
家族で飽かずに眺めに眺めた。
でも、ハリモグラについて何にも知らなかったので、家に戻ってから調べた。

そしたらなんと!
大好きなカモノハシと同じ目(瞳の目じゃないよ)。
カモノハシ目に属するという。
カモノハシ目には、カモノハシ科とハリモグラ科しかない。
要するに、他には親戚がいない。

カモノハシ目は、オーストラリア区にのみ生息する。
りっぱな哺乳類のグループ。
卵を産み、卵から孵った子にお乳を上げて育てる。
尿道・生殖孔、肛門が分かれていない。
通り道がひとつなわけだ。
ああ、それで、単孔目とも呼ばれるのね、と納得。

くちばしのような口を持ち、そこからチョロチョロと長い舌を出す。
口は5ミリぐらいしか開かないので、長い舌を使ってアリやシロアリをお食事に頂く。

ちなみに、イギリスにいたとき大好きだったハリネズミ。
日本語で聞くと、ごっちゃになりやすいし、どちらもとげとげだから間違い易いけれど、
ハリネズミの方がハリモグラよりかなり小さい。

あーもうなんて、かわゆい。
ぎゅっと抱きしめたいけど、それだけは無理だな。


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Echidna (2009年 オーストラリア)