サンタの登場する物語はたくさんある。
また、映画の題材にも何度も取り上げられている。
どのサンタも大抵、優しくて、温かくて、気前がよくて、ホッホッホッと笑っている。
でも、私の一番好きなサンタはちょっとだけ違う。



fathere christmas 1




このサンタさん、とても人間臭い。
何より無類の寒がりやだ。
いつでも夏のヴァカンスを夢みている。
だから、年に一度のお仕事は難行苦行だ。
イブの朝はため息混じりに目を覚ます。
何しろ、大仕事が待っている。



father christmas 3




橇を駆って寒い雪の中に飛び出し(北半球では)、各家を回り、プレゼントを配らなければならない。
だから、ついブツブツと文句を言う。
煙突からお家にお邪魔するときにも、屋根の上でお弁当を食べるときにも、お家の中の長い長い階段を上るときにも、屋根にある邪魔っけなアンテナにぶつかったときにも…

お家にはサンタの為にミルクとクッキーがトレイに載って用意されている。
でも、それより、たまに気を利かせて置かれているアルコールに目を輝かせる。
小さなトレーラーのお家からバッキンガム宮殿まで、分け隔てなく贈り物を届けるお仕事をやり遂げると、家路へと急ぐ。
家に着いたら、まず、紅茶を一杯。(とってもイギリス人)
そして、クリスマスディナーの支度を済ますと(クリスマス・プディングも忘れない!)、ぬくぬくと熱いお風呂に入り身体を温める。
それから、エールを一杯。



Raymond Briggs Father Christmas 2




ワインを片手に食事を楽しみ、食後にはコニャックのグラスを傾ける。
クリスマスプレゼントを開けるのは最後の仕事。
そして、寝る前の温かな飲み物を持って(その前の入れ歯のお手入れも忘れずに)寝室に向かう。
そして、灯りを消して寝付く前に、ちょっとめんどくさそうに挨拶してくれる。

“Happy blooming Christmas to you, too!”

絵本には、ほとんど文字がない。
ストーリーを伝えるのは絵だけだ。
言葉は要らない。
絵が十分に語りかけてくれる。

私にとって、お伽話の中にしか存在しなかったサンタは、レイモンド・ブリッグスの『さむがりやのサンタ』との出会い以来、年に一度、冬の夜空を駆け巡るようになった。

今年のイブも凍てつく夜空を見上げよう。



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father chrstmas japanese